ティラノゲームフェス2019で『王家の棺』が入賞したことについて

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2016年から開催されている“世界最大規模のノベルゲーム開発コンテスト”ことティラノゲームフェス。その2019年開催で、qbert制作の『王家の棺』が佳作を受賞しました。フェスへの作品エントリーは2017年開催ぶりの2回目で、前回の『お父さんのPCクエスト』に続いての受賞となりました。

しかも今回開催から新設された“スポンサー賞”にも選んでいただきました。これは個人がフェス運営に一定額を出資することで好きな作品に好きな名前の賞を与えられるというもので、その受賞作はある特定のプレイヤーに深々と刺さったことが一目瞭然となる、非常に制作者冥利に尽きる制度です。

スポンサー賞に選んでくださった方は、ご自身でも個性的なノベルゲームを制作・発表されています。『王家の棺』の公開ページにも感想コメントを書いてくださっていますが、それを読む限り“真のスポンサー”は氏のお父さん──私(gtozka)と同世代のシニアゲーマーではないかと思っています。

『王家の棺』をフリーゲームとして公開した背景

『王家の棺』は、qbertが現在制作中のノベルゲーム『レトロゲームエイリアンズ』内で遊べるゲーム内ゲームのひとつを抜き出したものです。ティラノゲームフェスの応募作品の規定に「単体で完結していること」とありましたが、本作は“1980年代に実際にリリースされたPC用アドベンチャーゲーム……という設定のオリジナルゲーム”なので、その前後のストーリーから切り離された状態でも問題なく遊べるとの判断からエントリーに踏み切りました。

Retro Game Aliens _ Tokyo Game Show 2019 PV

『王家の棺』は単体で遊ぶと、見た目が古くさく、演出の間がもっさりとしていて、UIが不親切。そのくせ手書きマッピングが必要な規模の移動をさせられる上にストーリー進行フラグがわかりにくい、何というかプレイアビリティの低い作品です。

個人的にそういうタイプのゲームは苦手ですが(笑)、『レトロゲームエイリアンズ』の本編ではそういった要素がゲーム内ゲームで再現されていることが重要な意味を持つため、あえて突き放したデザインを心がけました(行動決定方法をコマンド入力型ではなくコマンド選択型にするなどの“最低限の現代化”は施しています)。

『レトロゲームエイリアンズ』の制作が進み、ゲームの新情報をどんどん公開していく過程で、その一部がすでに遊べる状態でネット上に無料公開されていたら気が利いているだろう……というプロモーション面での理由から本編に先行させての制作。しかもメインターゲットが40代後半~50代前半の男性の内容ということで、こういったコンテストで評価されることはないだろうと思っていました。

それだけにこういった形でスポンサー賞をいただけたことは予想外であり、同時に『レトロゲームエイリアンズ』の方向性が間違っていないことを確信することができた、貴重な経験でした。この場を借りて改めて朝見明絵さんとそのお父さんに感謝します!

『王家の棺』の良いところ(自分で言っちゃう)

まだプレイしていない方のために『王家の棺』のこのへんがいいんですという部分を紹介しておきます!

その1 ヒロインのキャラデザインが秀逸

本作で使用している約40点のグラフィックはすべて私(gtozka)が作成しました。昔漫画を描いていたこともあり「これくらいの解像度(1ピクセル=横2縦1の、110×135ピクセル)なら、できらぁ」と、意気込んだはいいものの、ストーリー構成上、ゲーム後半から登場するヒロイン“ネテル”だけはちゃんとかわいくする必要がありました。そこで『レトロゲームエイリアンズ』本編のキャラクターデザイン担当のイラストレーターどろみずさんに特別にデザインしていただきました。その甲斐あってとても印象的なキャラクターになっていると思います。ちなみに設定画のひとつは、フリーゲーム版のタイトル画面で使用しています。

どろみずさん本来の画風は、インディーズバンド「月には兎がいる」のMVなどで堪能することができます。アニメーションも制作しているというから、スゴイ。

月には兎がいる(tsukiusa)『真昼の月』 MV

その2 レトロゲーマー心に響くBGM

『レトロゲームエイリアンズ』のゲーム内ゲームのBGMは、レトロゲーマーの心にしっとり染み込むタイプのチップチューンを得意とするサウンドクリエーター・Foilverbさんによる完全新曲です。『王家の棺』でも、物語世界のイメージを広げ、プレイヤー自身のノスタルジーを刺激する名曲を聴くことができます。実際のところ1980年代前半のPC用アドベンチャーゲームに、BGMが演奏され続ける作品はほとんどないのですが、そこに関しては年輪を重ねてきたゲーマーの心象を優先しています。

Foilverbさんの新作ソロアルバム「Cheap Dreams」には、『王家の棺』のBGMっぽいフレーズが含まれた曲も収録されています。気に入った方はbandcampにて視聴&購入を!

その3 そもそも手本にしたゲームが偉大

『王家の棺』は、1983年にマジカルズゥ(ストラットフォード・コンピューターセンター)がリリースしたPC用アドベンチャーゲーム『黄金の墓』に多大な影響を受けて制作された作品です。といってもストレートなパロディではなく、「広大な砂漠を移動し、さまざまな人物や動物と出会い、それ以上進めないと思われた道を切り拓く」という基本設定のみを借りた別作品なので、『黄金の墓』をプレイしたことがある方はすでに知っているような新鮮なような、不思議な気持ちで楽しめるようになっています。

『黄金の墓』が当時どのような人物によってどのようなコンセプトで作られたについては、昨年制作・販売開始した同人誌「ビデオゲーム史を巡る冒険シリーズ① 黄金の墓」で知ることができます。単純にゲーム史の読み物としても面白くまとまっている(はず)なので、興味のある方はBEEPさんの通信販売か、秋葉原の店舗・BEEP秋葉原で直接お買い求めください!

【再入荷】ビデオゲーム史を巡る冒険① 黄金の墓 / qbert|BEEP ゲームグッズ通販

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