記者&出展者で参加したBitSummit 7 Spiritsのふり返り&一般枠出展時の7 Advice

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2019.6.1~2に京都市勧業館みやこめっせ(京都府)で開催された BitSummit 7 Spiritsのふり返り記事の3回目です。前回はこちら。

今回は、2019.7.19にPico Pico Cafeさんで開催されたインディーゲーム発表会picotachi vol.66で私(gtozka)が行ったプレゼンテーション「BitSummit 7 Spiritsの取材&出展のおもいで(Experience report of “BitSummit 7 Spirits” by reporters and game exhibitors)」の内容を再編集したものです。

イベント自体について

1回目の記事の最後にも書きましたが、近年のBitSummitはイベントとしての規模を広げることで結果的に“インディーの自由な気風枠”を広げようとしているのではとの印象を持ちました。

この枠に収まることは、BitSummitの基本コンセプト“国内の面白いインディーゲームを海外に向けて発信”が効力を持ち続ける限り、独特のピラミッド型コミュニティへの迎合や従属とイコールではありません。

イベント後の出展者アンケートの項目から察するに、次回以降ピラミッドの底辺をさらに広げる方向で動く様相。それによって一般枠で参加する個人・小規模チームのゲーム開発者がどのような景色を見られるようになるか興味深いところです。

記者はどんなゲーム・ブースを取材するのか?

BitSummitの場合、各商業メディアの取材の優先度は“アワード発表などの速報系”、”業界著名人や海外ゲストの講演・ステージイベント”、“事前に打診されたクリエイターインタビュー”あたりが高めになります。

“出展ゲームの個別紹介”はというと個々の記者が上記案件をこなす合間になかば心意気で担当するケースが多く、とすると自然と記者が本当に気に入って紹介したいゲームが厳選されることになります。

その際どういった要素を重視しているか? という記者側の基準は、出展者にとっては大規模な出展イベントでメディア関係者に注目されやすくなるノウハウにも通じるのでは……ということで、僭越ながら私見を挙げていきます。

見たことがない

まだ世間で話題になっていないこのゲームに俺がいち早く目をつけた”という思い込み、もとい確信は記者のテンションをおおいに上昇させます。こうしたイベントの一回性・一期一会感は出展者側で演出・調整できる部分でもあるので、あからさまな嘘でもない限り、積極的に活用するとよいでしょう。

出会いの感激に、肝心のゲーム内容がともなっている必要がありますが、BitSummitの場合そこはエントリー審査の段階である程度保障されているはずです。

ずっと気になっていた

「巷で話題になっているor自分のSNSのタイムラインで見たことがあるゲームが出展されるのか。どんなもんか見てみよう」という動機は、記者の内心ではそのイベント最大の目的になる場合があります。

SNSによる自力での情報発信も大事ですが、記者は自分の担当ジャンルに近い記事を読むのも好きなので、事前にどこかの媒体で紹介記事化されていると、より注目度が上がります。

じゃあどうやったら記事化されるか……については今回の投稿の趣旨からえらく脱線してしまうので省略。

雰囲気がいい

コスプレのコンパニオンさんが構ってくれる……でもいいんですけど別にそうでなくても、出展ブースが“自然にゲームプレイできる空間”になっているとノーマークだったゲームとの思わぬ出会いのきっかけになります。

出展者さんがなぜかピリピリムードでスマホをいじっていたり、出展者さんの身内っぽい集団の談笑の場になっていたり、何か買わされるんじゃないかって勢いでグイグイこられたりすると、記者は……というか私は(ついに言っちゃった)そそくさと素通りしてしまいたくなります。

そういうのをまったく気にしないプロ根性旺盛な記者さんもいるかと思いますが、お祭りムードなイベントこそ、ちょっとした気遣いで間口の広さがだいぶ変わってくると思います。

今後一般枠での出展を考えている方へのやや斜めなアドバイス

BitSummit 7 Spiritsにはqbertとして制作中のノベルゲーム『レトロゲームエイリアンズ』を一般枠ブースで出展。試遊用PCを2台設置したのですが、驚いたことに終日ほぼ誰かが触っているという盛況ぶりでした。ちゃんと作ろうとしているゲームの体験版を楽しそうに、あるいはガチそうにプレイしている人々の様子を見守ることがこんなに充実するものだとは想定外で、私が普段取材している方々は皆これを何食わぬ顔(?)で経験していたのかと畏れ入りました。

私が一方的に知っているクリエイターさん(某ゲーム会社社長)がプレイ後「完成したら買います!」と仰ってくれるミラクルに立ち会えたりするのは、出展者もイベント自体をフランクに楽しめるBitSummitならではだと思います(ここで「◎◎さんですよね?」とフランクに切り出せないのが私の人間力の限界)。

以下に、BitSummit初出展なりにこういうところに気をつけておいてよかったとか、終わってからああしておけばよかったといった項目をダーッと挙げておきます。来年以降の開催でいろいろと変更・改善される部分もあるかと思いますが、押さえるポイントはだいたいこんなところでしょう。

出展の「大義名分」を用意しておく

すでに話題作だったりする場合とくに気にしなくてもいいですが、ほぼゼロベースでエントリーする際には“なぜこのゲームがBitSummit会場にあるといいのか”という根拠を示した方がよいでしょう。

例えば、私が作っているゲームはジャンルとしては必ずしも“BitSummit映え”するものではありません。しかし作品が標榜するレトロの方向性が比較的未開拓であり、それがどストライク層以外(若い世代や海外ゲーマー)にどう捉えられるかを知るにはBitSummitに出展するのが最適と判断……という“背景ストーリー”を用意することで、自分(出展者)と相手(イベント運営側)それぞれにとって、このゲームが会場にある状態が自然になります。

エントリーフォームの“BitSummitとの関係”項にこのことを書いたのがパスの決め手となったかどうかはわかりませんが、出展側がどのような人間で、このイベントにどのような意義を感じて申し込んでいるかを整理し表明することは、自身のイベント参加動機の原点に立ち返る際にも心強い道しるべになるでしょう。嘘で塗り固めていたり実際のゲームとのギャップがありすぎる背景ストーリーは後に自分の首を絞めることになる可能性大なので、脚色はほどほどに。

審査フォームには日本語英語の両表記を

これは過去開催のBitSummitでエントリー審査員を務めたことがある立場としての実感です。なお今年は出展者参加するため辞退しました。

審査員が何人いてどういう条件を満たすとパスか、みたいなことは知りませんが、評価用のクローズドなサイトを見る限り、英文で書かれた意見が目につきます。これはBitSummitがどのような出自のイベントでどういったコンセプトで開催されているのかを考えれば当然の傾向といえるでしょう。

すでに話題作でもなければ(こればっか)、出展ゲームおよび自分自身の基本情報は、より多くの人が読める状態にしておきたいものです。実際、BitSummitの公式サイト用のページは日本語用と英語用を作成する必要があるし、英語ができる人は面倒くさがらず、私のようにできない人はGoogle翻訳などの翻訳サービスをフル活用して対応しましょう。

翻訳サービスは日本語→英語の1回利用で済ますのではなく、文面を微調整しながら何度か往復翻訳させることで、頓珍漢な訳文になる確率をグッと下げることができます!

チラシ類の刷り部数はやや強気めで

「このくらいかな……」という枚数で用意した配布用印刷物がイベント中に尽きるのは“初出展あるある”かもしれません。こういう面でもBitSummitの集客力の高さを思い知らされました。

他のイベントにも使い回せる内容でればなおのこと、目算の2倍は用意しておきましょう。

出展ブースの「空間」をしっかり設計する

BitSummitの一般枠ブースは現状の会場ではフロア中央部に固められます。

コミケでいうところの“サークルスペースの内側”のようなスペースがないため、出展者の荷物はブースに割り当てられた長テーブル下に押し込み、出展者自身はその周辺にたたずみ続けることになります。

ブースの飾りつけはテーブル上で完結させなければ……と思い、事前に発表された寸法を参考にきっちり計算して構成したのが下画像の右側。ちょっとキュッとしています。

実際には長テーブル周辺のスペースにポスタースタンドなどを設置しても通行の妨げにならないほどの余裕がありました。このような“透明な自分エリア”をいかに有効に使うかは、サークル配置が長屋タイプの出展イベントとはまた異なる発想が必要になります。

ブースの長テーブルは、他の出展者用長テーブルと向い合せでピッタリくっつける配置となります。つまり「こっち側は自分エリア」ということを主張する何らかの“仕切り”をどちらかが用意しないと、自身の出展物に関係ない情報が筒抜け状態になってしまうのです。

すでに話題作であったり自身のゲームに絶対の自信でもない限りは、出展ブースの世界観構築を意識しましょう。

出展スタッフは自分以外にも必要

出展者である前に取材記者である私は、ブースを一人で切り盛りすることははなから諦めていました。

今回ブース番をお願いしたのは、制作中のゲームのサウンドを担当していただいている“たまたま”京都在住のアーティストさんと、以前より親交のあった京都在住のインディ―ゲームサークルの方2名、そしてなぜか漢気を発揮してくれた家族(奥さん)の計4人。ブースの飾りつけ類を制作していただいた、制作中のゲームのグラフィックデザイナーさんを含めると5人の協力を得てどうにかこうにか形にすることができました。

たとえ取材記者としての仕事がなかったとしても、10:00~17:00のイベント開催時間×2日間+設営・撤収をひとりで行うは明らかに高難度なプランです。首に下げるタイプの出展スタッフ証は最大5つまで支給されるので、あらゆるつてを辿って誰かしらの助けを借りた方がよいでしょう。人に頼むことで心労が溜まってしまう人は……どうしようね(笑)。

ちなみに出展用レンタル機材(PC、モニター)の貸借手続きは、現状の仕組みでは非常に時間がかかります。機材レンタルは協賛メーカーありきのありがたい制度ですが、ひとり出展で利用するとこういう面での拘束時間が莫迦にならないことも心得ておきましょう。

運営の対応力には穏やかな心持ちで

一般枠の審査結果報告、イベントの準備関連の連絡、一般への情報公開タイミングの告知……などは出展者のグループメール経由で行われます。その配信ペースはいろんな意味で“インディー感”満載なので、一方的にキッチリした対応を期待していると血管を痛めてしまうかもしれません。

「これもまたインディー」と清濁飲み込む器量(能天気さ)が必要です。

「イベントジャンキー」にならないように

いろいろなイベントを取材していると、とくに制作が進んでいるように見えないのにありとあらゆるイベントでブース出展しているデベロッパーさんをちらほら見かけます。

これまではその理由が理解できなかったのですが、今回出展したことでばっちりわかってしまいました。

ひとつはより多くの人に“このゲームとの出会い”を提供するため。記者は「またか」と思うゲームでも (失礼) 、ひとつひとつのイベントに訪れる大部分の人にとっては初めて見るゲーム。一回性の出来事の提供によって自作ゲームに関心を持ってほしいと考えるのは、作り手として健全な動機です。

もうひとつはイベント出展合わせによる制作のモチベーションの維持。今回、ひとつのイベントに出展すると終わった後の虚脱感がすごいということを身をもって体験したわけですが、そこからやる気を奮い立たせるには“当面の締切”が必要ではないだろうか……という発想に自然に流れていくことも実感しました。

さしあたり直近のイベントに参加を申し込み、出展が決定すると一時的にやる気が出るかもしれません。しかし制作作業自体は思うように進まず結局イベント参加の実務で手一杯になり、展示するのは前回と同じビルド。それでもイベント参加後の虚脱感は同じように訪れるので、やる気を出すために直近のイベントに……とまんま例の悪循環に陥る未来まで見えてしまいました。

バイタリティ溢れる人ならまるで気にすることではないかもしれませんが、そうでない人は、BitSummitのような大規模かつお祭りムードが強調されたイベントに出展する時ほど“心のアフターケア”を気にかける必要がありそうです。

ちなみに私は半月以上ゲーム制作の続きをする気がおきませんでした。いまはなんとか回復し、できることからコツコツと再開しています……。


いかがでしたか?(←一度使ってみたかった)

そこそこ汎用性があり共有してよさそうな経験談は以上です。「そんな風に思うのはアラフィフのおっさんだからだよ」というのが結構あるかと思うので適度に割り引きつつ、取り入れられそうなものは取り入れてみてください!

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