レビュアーが夢想するさいきょうのゲーム
「クロスレビューはゲームになるんじゃないか?」ということを、1年前くらいからぼんやり考えていました。
クロスレビューとは、テレビゲーム情報誌、週刊ファミ通(カドカワ)の定番コーナーのこと。
4人(4枠)のレビュアーが、同一のゲームソフトにたいする評価を、文章と10点満点の採点で行うというもので、私自身、2013年からレビュアーのひとりとして携わっています。
大きな数字がズラズラと並ぶ、コーナーページのぱっと見の楽しさ。
当事者になったことで改めて思い知った、“数字の魔力”の凄まじさ。
これを使わない手はない!!
ということで、とくに実現させるあてもないまま、壮大かつシミュレーション性の高いゲームを夢想する日々を送っていました。
しかし、前回記事でレポートした「2015年 秋の!? 自作ゲーム大運動会」への参加を決めた時、そのアイデアを、自身のゲーム開発スキルに見合ったスケールで、かつ、
実際のクロスレビューとは一切関係のない、フィクション性の高いミニゲーム
に落とし込むことにしました。
イベント提出用ゲームのレギュレーションを加味しつつ、最初に定めたコンセプトは、以下の通り。
これなら大丈夫だろう……ということで、仕事の合間にコツコツと作ったのが、以下のブラウザゲームです。
環境が整うようでしたら、ぜひプレイしてみてください。
レビュアーにレビューを迫ったら……
自作ゲーム大運動会で披露した時は、CPUレビュアーの点数のバラつき具合にひと言物申したり、スコアはともかく10点をつけ続ける人がいたりと、プレイ中の様子に、その人なりの“クロスレビュー観“がほの見えたのが、楽しかったです。
せっかくだから、クロスレビューの“プロフェッショナル“の感想も聞いてみたい……。
そう思い、仕事でファミ通編集部に出向いたとき、居合わせたプロフェッショナルの皆さんに、自作ゲーム大運動会で披露したバージョンから改良を加えたものを、無理やりプレイしてもらいました。
「グラフィックがいいですね」
「シュール」
「自分の名前をつけられるといいね」
「完成させただけですごい」
と、反応はおおむね好意的。
プレイ後、皆一様に「…で?」という間を作っていたのが印象的でした。
さらにつけ上がって、「このゲームに点数をつけるなら何点ですか?」とたずねたところ、明言をことごとく避けられました。
顔見知りへの気遣いなのか、仕事以外でゲームに点数をつけることはしたくないからなのかは、わかりません。
お一方だけ、「このゲームの中のレビュアーは7点をつけやすいんですよ」と説明したら、「じゃあ、7点で」と言ってくださいました。
Scratchでなければならなかった理由
本作は、Scratchというプログラミングソフトで制作しました。
Scratchの出自は、米マサチューセッツ工科大学メディアラボ内チームが、子供向けに開発したもの。
Flashプレイヤーが動作する、オンラインのウェブブラウザ上で、誰でも無料で利用で可能です。
オフラインエディタも公式サイトからダウンロードできます(※利用の際にはAbobe AIRのインストールが必須)。
日本語にもバッチリ対応。
しかも漢字使用と未使用の2バージョン対応という、至れり尽くせりぶりです。
大まかなプログラミング方法は、ブロック(パズルのピース状にビジュアル化された、各種命令文)を各ルーチンの実行順に上から並べること。
グリッド合わせの要領でピタッとくっついたり、簡単に引き離したりできるブロックを弄んでいるだけでも、なかなか楽しい気持ちになれます。
構文を直接タイプするプログラミング言語はからきしダメな私が、なぜScratchなら扱えるのか?
たいして複雑なことはできなくても、「これなら何とかできそうだ」というポジティブな展望を持ったまま、思い描く完成形目指してして制作し続けられたのには、いくつかの理由があります。
具体的な使い方は専門書におまかせするとして、Scratchがいかに「簡単に作れてそこそこオリジナリティを出せる、ゲームっぽい何か」を作るのにちょうどいいものかを、個人的印象をもとに、紹介します。
■とっかかりが抜群にいい
Scratchを起動すると、こういう画面になります。
左上のスペースの真ん中に、立ち姿のネコが表示されています。
プログラミングになじみのない小さな子供が初めて見ても、「このネコを何かできるのかな」という発想に、自然とたどり着けるようになっているのが、見事です。
実際、画面中央に並んでいるブロックを、画面右側のスクリプトエリアにドラッグして……といった、初歩的な操作ガイドさえあれば、すぐにネコを何かしら動かせます。
こうしたわかりやすい成功体験を、かなり早い段階で味わえるのは、子供に限らず、根気と集中力のない大人にとっても、ありがたいことでした。
■わりと動いちゃう
Scratchのプログラムは、スプライト(キャラクター画像)ごとに記述します。
そのスプライトの表示や移動に関することだけでなく、全く関係ないことをさせるスクリプトも組めてしまうのが、戸惑うところでもあり、融通がきくところでもあります。
しかも、スクリプト(ブロックの塊)の中身に多少難があっても、華麗にスルーして、なんとなーく動作してしまう図太さも、持ちあわせています。
無計画にスクリプトを追加していくと、どのスプライトで何をしているのかわからないまま動いている……という事態になりかねませんが、そういうスリルもまた、物づくりの醍醐味です!
雲行きが怪しくなるたびに、プロジェクトデータを別ファイル名でセーブするのは、基本ですが。
■絵・音の素材を自由に追加できる
子供向けということで、グラフィックやサウンドは、ネコなどのありものしか使えないかと思いきや、自前の素材をどんどんぶっこめます。
実行画面の解像度がそんなに高くないことや(縦480ドット、縦360ドット)、3Dグラフィックスに非対応などの制限はあるものの、こんな雰囲気にしたい、というイメージは、十分に実現できます。
『REVIEW*X』では、表面的な印象をMSX規格パソコン風にすることが、テーマのひとつでした。
なぜ1983年リリースのホビーユースPCらしさを? ということに関しては、それが、いちおっさんゲーマーにとって魅力的な“縛り”だからです。
自己満足、ともいいます。
それを、ちょっとした手間で実現できることは、Scratchが単なる“教材”にとどまるソフトではないことを意味しているように、思いました。
迷っている暇があれば形にした方がいい
Scratchは、プログラミングを職業としている一部の方々からすれば、「私だったらこう設計するのに……」という意欲を掻き立てられる存在のようです。
アンチまたはポストScratchを謳う、カジュアルなプログラミングソフトがいくつか世に出ている状況を、「これもまたScratchがはぐくむ創造性の一例」などと外野が言うのはお門違いにしても、PC使用歴はそこそこあるけどプログラミング経験はゼロに近い大人が、いきなり触ってしっくりくる環境は、限られています。
作ったゲームでひと儲け、が第一目的だったりすると、作品をパッケージ化できないScratchを学ぶことは、遠回りにしかならないでしょう。
そうではなく、「私にもゲームが作れるんじゃないだろうか」というぼんやりとした思いに、どんな不格好でもいいから形を与えたいという、切羽詰まった人にとっては、優しく、頼もしい存在です。
本当の自作ゲームをオリジナルフィギュアに例えるならば、さしずめScratch製ゲームは、レゴかLaQで組み立てた、何か。
その「何か」が、結構、愛おしかったりするんです。
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コメント
何回かやって、最高170点いきました!
字が読みにくいけど、面白かったですよ。
空気読むとポイント高いのってよくわからないけど、
それもお仕事なんですね、がんばってください(^^)
>さいふぉんさま
プレイしていただき、ありがとうございます!
170点はすごいですね。運要素も働かないと、なかなかここまで伸びません。
ちなみに、エアライド(空気を読むこと)は、このゲーム用のフィーチャーです。
実際のレビューとはまったく関係ないですからね!