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テレビゲームに親和性のある音楽レーベルLast Parade Records・代表Foilverb氏に訊く

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その“パレード”はどこからきてどこに向かっていくのか

先日開催されたレトロゲーム・マイナーゲーム中心同人誌即売会“ゲームレジェンド28”で、新譜「カンフー・ポリス OriginalSoundtrack」をリリースした“Last Parade Records(ラストパレードレコード)”。

もともとは京都を拠点に活動するサウンドクリエイター“Foilverb(フォイルヴァーブ)”氏が個人活動用に2012年に設立したチップチューン・エレクトロニカ中心のインディーズ音楽レーベルだったのですが、2018年より同氏に所縁のあるミュージシャンの作品のプロデュース・リリースを本格始動。ジャンルの大枠はそのままに、レーベルとして提供するサウンドの多様性を高めています。

【Last Parade Recordsについて】2018.5現在のLast Parade Recordsの所属アーティストは、Foilverb氏、Nichico Twelve氏、Hemming Bird氏、Kazemasu(風増)氏のサウンドクリエイター陣と、デザイナー・大瀧翼氏の5人。レーベルのサンプル音源は、インディーズアーティストを中心とした音楽のストリーミング・ダウンロード販売サイト“Bandcamp”で無料公開中。ちなみに当サイト上でも、ジャケット画像をクリックすると音楽の再生・停止ができます。

 

そして2018.6.1~3に開催される同人音楽作品のオンライン即売会イベント“APOLLO 08”では、Foilverb氏の新作「Solitary Battlefields EP」(デジタルデータ版)を出展予定。収録曲は3曲で価格は600円とのことです。

 

同には、2017.12.24にリリースされたiOS用ワイヤーフレーム弾幕シューティング『崩壊のダンガンウォール』用にFoilverb氏が書き下ろした挿入歌「Ignition Bullets」が収録されるということで、ファンにとっては待望の単独音源化です!

企業のPVやCMのサウンドディレクターを“表の職業”としながらも、サウンドクリエイターやレーベルのプロデューサーとしても精力的に活動するFoilverb氏。

 

ただその実像は、スタイリッシュかつ情報量が極めて少ない公式サイトではなかなか伺い知ることができなかったので、勝手にファンを代表して、いろいろ尋ねてみました!

界隈で浮きまくっているチップチューン・アーティストとして……

──Last Parade Recordsを設立したきっかけを教えてください。

Foilverb氏 2008年から2012年頃まではエレクトロニカレーベルの事務所所属のユニットとして活動していました。アットホームなレーベルで居心地が良かったのですが、音楽しかできない自分と違いなんでも出来るスペックの高い所属ミュージシャン達にコンプレックスを抱くようになったのが、直接のきっかけです。

──他の事務所に移籍するという選択肢もあったのでは?

Foilverb氏 まったく無名の頃に拾ってもらった恩義があるので筋を通そうと思いました。新規でレーベルを作って活動するなら不義理にはならないだろうと。あとは、学生時代からずるずるやってきた音楽活動を仕切り直したかったという気持ちもありました。

──レーベルというかご自身の音楽の特徴は?

Foilverb氏 もともと志向していた、エレクトロニカとポストロックを混ぜた音作りに、チップチューンの要素を加えている……という感じです。

──チップチューン要素は、自身のテレビゲーム体験から来たものでしょうか?

Foilverb氏 そうですね。ゲームを意識的に遊びだしたのはスーパーファミコンからですが、それ以前は、5歳上の姉がファミコンゲームを遊んでいる姿を横で見ていました。『太陽の神殿』(※日本ファルコム開発のアドベンチャーゲーム。ファミコン版は東京書籍が1988年に発売)のBGMが印象に残っています。そういった部分は、以前所属していたレーベルの活動では大っぴらに出せるものではありませんでした。

──それはなぜ?
Foilverb氏 あのジャンルは音大や芸大でピアノをやっていましたみたいな“ガチな人たち”や、独学でもストイックな人たちが主流で、当時はミュージシャンとしてのバックボーンに格差を感じていました。ゲーム音楽寄りなサウンドを作ってみたいという思いは、音楽活動を始めてからどことなくずっと持っていました。

──となるとレーベル名は「こうなったらもう好きなことやったれ!」みたいな、開き直りの気持ちの表れだと。

Foilverb氏 それに関してはエレクトロニカ、ポストロックの退廃的な世界観を引きずっています。”みんな棺桶を担いで歩いている”みたいな、後ろ向きなムードの行進です。

──ええ……。

Foilverb氏 そっちの流れを汲んだままチップチューンに合流しているので、良く言えば唯一無二、悪く言うと界隈で完全に浮いています(笑)。フロアで踊れる感じのイベントに出演すると、出番が早いんです。序盤の箸休め的なタイミングで。

──たしかに、フロアを温める作風とは少し違いますね(笑)。「Sleeping Worlds」「Melancolia」などの初期オリジナルアルバムの曲の中で使われているレトロゲーム機の内臓音源っぽい音は、それ自体を「どうだ」と聴かせるものではなく、曲全体で作り出している世界観なりムードなりの、エモーショナルな側面を担っているように感じます。音自体のキッチュな魅力で勝負していないというか……すみません、うまく表現できなくて。とにかくそういう音の構成が意外だったというか、擦れたおっさんゲーマーにもスッと入ってくる感じがしました。

Foilverb氏 ありがとうございます。このふたつのアルバムに共通するコンセプトは“現実逃避”で、それぞれのテーマやタイトルは、先行して描いてもらったジャケットイラストからイメージを発展させて決めました。

──「こんな曲できちゃいました、聴いてね!」みたいな作り方ではないと。

Foilverb氏 何もないと逆にできないですね。イラストや映像などのビジュアル用に作る音楽、という形でしかできません(笑)。

【Last Parade Recordsワークス その1】Foilverb氏初の個人活動は、カナダ人が製作した日本のアーケードゲームシーンのドキュメンタリー映画「100yen japanese experience」(2012)への楽曲提供。この時は“DJ BIGBROTHER”名義だったが「同じ名前で活動している人が世界中にいっぱいいるので、これはよくないなと思い名前を変えました」とのこと、なぜFoilverb(ホウ素)にしたのかというと、「仲間内でやった“エレクトロニカやってそうなアーティスト名大喜利”で決めました」と脱力系の回答が。

【Last Parade Recordsワークス その2】アーティスト・Foilverb氏が志向するサウンドの魅力が凝縮された“現実逃避シリーズ”の第1弾「Sleeping Worlds」(2014)。ジャケットイラストを担当したのはイラストレーターの“仮眠”氏。『ゆめにっき』の小説版の口絵も手がけたことがある氏の幻想的かつ幾何学的なビジュアル世界を出発点とした、ドラマチックな音楽世界を堪能できます。翌年には第2弾「Melancolia」がリリースされています(構想としては全4部作とのこと)。各アルバムのダウンロードデータはBandcampで7.5USドルから販売中です。

【Last Parade Recordsワークス その3】2009年にリリースされたPC/Flash用フリーゲーム『Tower of Heaven(天国の塔)』が好き過ぎるあまり、開発元のaskiisoftに許可を貰って制作したフルカバーアルバム「Tower of Heaven Cover Album」(2014)。しかも原曲を作ったflashygoodness氏にファンであることを真摯に伝え、前述のアルバム2作にリミックスで参加してもらうという偉業を成し遂げました。アルバムのダウンロードデータはBandcampで無料で入手可能です。ちなみに2017年には「Luna Ascension」の新たなリミックスを公開するなど、Foilverb氏の『Tower of Heaven』愛はいまだ継続中のようです。

キーワードは“京都発の架空サントラ”!?

──Last Parade Records名義では、すでにいくつかのゲーム音楽を手がけられていますよね。

Foilverb氏 『星屑のダンガンチューンズ』(2015/Quizcat Games)では5トラックぶんの楽曲提供、『くびきの檻』(2015/シロノギラボ)ではBGMの作曲とサウンドディレクションを担当しました。ゲーム会社に入らなくてもゲーム音楽を作れたという意味で、インディーゲームの存在は僕にとって大きいです。
──以前、Quizcatさん(※Quizcat Games代表のゲームクリエイター/サウンドクリエイター)にお話を伺った時、「京都のチップチューンイベント“1H1D!!!”に参加している才能のあるクリエイターさんたちの楽曲を紹介したい」という意図もあって『星屑のダンガンチューンズ』を制作した……と仰っていました。Foilverbさんにとっては、出身地である京都を拠点に活動を続けていたからこその広がりもあったのではないかと。

Foilverb氏 “1H1D!!!”に出てQuizcatさんに知り合えたという意味ではそうですね。……あと、Last Parade Recordsの現時点での所属アーティストたちはもともとの顔見知りという点でも、“京都”はキーワードのひとつになっているかもしれません。今年1月にレーベルからアルバム「Mother」をリリースした“Hemming bird”の中の人は、現在は東京で商業作曲家をやってますが学生時代を共に過ごした間柄です。これまでは何かを一緒に形にする機会はなかったのですが、レーベルで他のアーティストのプロデュースもしていこうとなった時、「仕事だけじゃなく自分の作品も作りたい」と言っていた彼に声をかけました。

──「Mother」はちょっとアヤしげなSF映画のサントラのような趣のあるアルバムでした。先日リリースされた「カンフー・ポリス Original Soundtrack」は言わずもがなですが、それもまたレーベルの特徴のひとつなのかなと。
Foilverb氏 改めて振り返ってみると、僕が関わった作品は“架空のサントラ”という形式が多い(笑)。たしかにそこは、Last Parade Recordsのパッケージングの方向性として意識していきたいですね。
──もちろん、『くびきの檻 #オリジナルサウンドトラック』のように“実在作品のサントラ”でもいいんですよね?
Foilverb氏 はい! ゲーム音楽はどんどんこれからもどんどんやっていきたいので、興味がある方はお問い合わせください!

【Last Parade Recordsワークス その4】ニコニコ自作ゲームフェス2016で“ZUN賞”、“窓の杜賞”、“インディーゲームクリエイター賞”を受賞したパズルアクションゲーム『くびきの檻』のサウンドトラック。本作の音楽を東方Projectの神主・ZUN氏から褒められたのがいい思い出です……とFoilverb氏は振り返ります。現在ゲーム本編は、海外のPCゲームプラットフォーム“itch.io”にて無料でダウンロード可能(※デベロッパーの希望支援額は2ドル)。サウンドトラックのデータもBandcampにて無料でダウンロードできます。

【Last Parade Recordsワークス その5】Last Parade Records初のリリースとなる、Foilverb氏以外のアーティストのアルバム「Mother」。本作の世界観のネタ元は、Foilverb氏、Hemming Bird氏の学生時代の共通の友人が書いていたSF小説だそうです。中身は「2001年宇宙の旅」のストーリーをコンパクトにして用語を変えただけ……というものですが、「オリジナルを作るとしたらアレ(のサントラ)じゃないかな?」とすんなり決まったとのこと。アルバムのダウンロードデータはBandcampで7.5ドルから販売中です。

【Last Parade Recordsワークス その6】2018.5.10にYoutube上に公開された、日本の著名ゲームクリエイターに焦点を当てた海外ドキュメンタリー作品”Ebb and Flow – Conversations on the recent momentum of Japanese games”のBGM。Foilverb氏は、Bandcampの2016年の日本人アーティスト特集記事でピックアップされるなど、海外評価が高いのが特色……ですが私(@gtozka)も大好きです!

『Last Parade Records』公式サイトはこちら

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