1996年当時こんな未来を少しでも予想していただろうかと『いつかの未来』をプレイし思う

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過去のものにたいする現在進行形のアプローチを試みたフリーゲーム

単なるドット絵が、もはやレトロゲームのアイコンとして機能していないように、”懐かしいゲームの感じ”を表現する際には、それなりの予備情報が必要になってきます。

でなければ、“なんだかカッコいいか/カッコ悪いか”、“動きがスムーズか/ギクシャクしているか”、といった今この瞬間のプレイフィーリングだけで評価・判断され、そこでひとたびネガティブ判定されたら、”至らないもの”を貶すのが得意な方々人の一時的なエネルギーとなるか、ひっそりと闇に沈んでいくかのどちらかの道を辿ることになります。

そういう意味で、2017年10月に公開されたばかりのフリーゲーム『いつかの未来』は、“1996年生まれの自分→PC-98風ゲーム(1990年代中盤ごろまでの国内主力パソコン・PC-9800シリーズ用に作られたアドベンチャーゲームタイプのゲームソフト)を遊びたい→でも今遊べるものは少ない→作りました”という作者自身のストーリーを前面に出すことで、PC-98風のゲームに懐かしみを感じる世代の人にも、作者に近い世代の人にも、本作を”特定の心構えでもって遊ぶ価値のありそうなもの”として、効果的に際立たせています。

フラットな視点で短編ノベルゲームとしてみると、物語自体はテキストオンリーでもなんら魅力を損なうことなく成立するタイプ。
むしろ、星新一小説ライクなオチの部分のみ質素に表現したことの拍子抜け感が際立ちます。

しかし本作の真骨頂はあくまでも“PC-98風ゲーム”としての体験。

解像度640×400の16色で描かれたグラフィックは、おそらくシンプルな工程の画像加工ながらグラデーションがそれっぽく表現され、ムードが出ています。CG表示スペース両端のスペースを埋めるよくわからない模様もいい感じです。

CGが切り替わる際のブラインド風エフェクトも「そうそうこんな感じ」と言いたくなる再現度。
「タン! タン!」という本体内蔵フロッピーディスクドライブのデータ読み込み音が聞こえてくるようです。

さらに気分を盛り上げるのが、ゲームのテキストを送るキーがマウスのボタン非対応でスペースキーのみという仕様。

グラフィックやサウンドといった表層部の再現度に満足するとつい、操作系は昨今のノベルゲームのスタンダードに安易に準拠したくなるところですが、本作ではしっかりと、画面外のインターフェイス面でも“PC-98風ゲーム気分”を盛り上げてくれます(ゲーム起動時の操作説明画面からしてすでに、いい雰囲気が出まくっているわけですが)。

本編のボリュームは前述の通り少なく、さてこれからどうなるんだろうというところであっさり終わってしまいます。
しかし、アップデートで追加された制作者さんの“あとがき”コーナーを読むことで、何とも言えないすがすがしさというか満足感というか、「プレイしてよかった!」という気持ちになれます。

現在数え年で21歳の制作者さんにとって、自身が生まれた頃すでに時代遅れハードになりつつあったPCおよびそのゲームソフトが、ノスタルジーの対象などではなく、“いまの自分の心を揺さぶるもの”として大きな位置を占めている感じが、嫌味なく伝わってくるからです。

となると、本作のタイトル『いつかの未来』が、ゲーム内で展開する物語の舞台にとどまらず、制作者さんとPC-98風ゲームを結ぶ、時空間の不思議な感じを絶妙に表しているようにも思えてきます。

肉眼や実写画像で見る青空もいいけれど、少ない色数で表現されているいかにもCGな青空にだって浪漫を馳せられる──よくわからないけどたぶんそんな気がするという方は、ぜひ本作をプレイしてみてください。
ダウンロードサイズが5MBというのも、お手軽でいいですよね。

■『いつかの未来』のダウンロードサイトはこちら




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COMMENTS

  • レビューありがとうございます!

    >そうそうこんな感じ
    も、もしかして98を実際にお使いになっていたのでしょうか……?
    動画などで切り替わり方などは見ていたのですが不安でしたので、再現度評価していただけて嬉しいです。
    スペースバー操作も、「98のマウスは補助的な物」という掲示板サイトの書き込みが情報源ですが、プラスになったようで良かったです!

    ちなみに、端の『よくわからない模様』は
    「他のゲームでも描いてあるし描くべきだが色数制限で色多く使えないし、派手すぎると画面から浮くし、というか今作にモチーフとか無いし何描こう」
    と考えた結果の、「近未来とかサイバーっぽい電気回路とかそういうの」という適当な模様ですw

    長々したあとがきについても記述してくださりありがとうございます。
    情熱が伝わったようで嬉しい限りです……!

  • gtozka

    >藤崎さま

    こちらこそ、ぐっとくるプレイ感覚をご提供いただきありがとうございました!

    私がPC-98シリーズを使い始めたのは1990年以降、仕事用のマシンとして利用するようになってからです(仕事といっても、当時の美少女ゲームの紹介記事作成のためですが…)。

    それ以前はMSXという廉価のパソコンを愛機としながら、PC-88、PC-98のゲームシーンをひそかに羨ましがっていたものです。

    そんな時代背景を思い出しながらの『いつかの未来』のプレイは、とても味わい深いものでした。

    今後の作品も楽しみにしております!